こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります。

学術集会ビューポイント イメージ1

基調講演やシンポジウムといったメインの企画について紹介します。今回の学術集会主題は「精神科看護の継承と発展」です。

学術集会主題
「精神科看護の継承と発展」

 近年、医療の現場では急性期医療の促進に伴う効率化が求められ、医療や看護の標準化が図られている。また、医療安全の重要性も高まり、医療事故防止のための準備や確認などの作業にかかる時間が日常業務の中で増えている。その傾向は精神科医療においても同様である。
 日本精神科看護協会では、精神科看護を「精神的健康について援助を必要としている人々に対し、個人の尊厳と権利擁護を基本理念として、専門的知識と技術を用い、自律性の回復を通して、その人らしい生活ができるよう支援することである」と定義している。つまり、精神科看護においては「その人らしい生活」の実現を目標にしており、個別性を大切にしてきた。「その人らしい生活」を実現するためには、患者理解を深めることが必要である。そこで、精神科看護者は一人ひとりの患者に個別にかかわることを看護の中心に据えてきた。しかし、医療現場では日常業務が煩雑になり、患者の個別性を重視してかかわる時間を確保することが難しくなっている。
 振り返れば、日本精神科看護協会は昭和22年に全日本看護人協会として結成されて以降、精神科看護者の看護実践を発表する場をつくってきた。そこで発表される実践は、それぞれの時代において患者の回復と「その人らしい生活」をめざしたかかわりであり、多くの示唆に富む実践知であった。全国から集まった仲間たちの精神科看護の実践からヒントを得て、新たな精神科看護に取り組む看護者たちのつながりは今も続いている。
 このように、先輩たちによる実践の歴史を振り返り、精神科看護における気づきを仲間と共有することで、精神科看護者は患者とのかかわりの意味を見出すことができる。それらは実践知となり、これからも次の時代に継承していくべきものである。
 今後は、これまで継承されてきた精神科看護を発展させていかなければならない。時代とともに注目を集める新しい精神科看護の視点や技術も、これまで培われてきた患者理解や患者-看護者関係を発展させたものとして学び、精神科看護の専門性のさらなる向上に努める必要がある。また、精神科医療の現場で実践されている治療や看護が国民に見えるようにすることで精神科医療に対する国民の関心も高まり、精神疾患を身近なものとしてとらえるようになり、それが精神科医療の理解と評価につながり、さらに質を高めることになる。あわせて私たちは、わが国が抱えてきた精神障がい者に対する偏見の解消をめざして、精神科看護者だからこそできる活動を受け継ぎ、発展させていくことが必要である。
 これまで継承し積み重ねられた精神科看護の知恵を、今後どのように発展させていくことが社会への貢献になるのかを、皆さんと一緒に考えたい。

基調講演

基調講演「精神科看護の継承と発展」
6月21日(金)9:30~11:00

◎ 講師

末安民生

日本精神科看護協会 会長

岩手医科大学看護学部地域包括ケア講座 教授

 

 精神科看護は、援助を必要とする人とつながる関係性に注意深くかかわることが基本です。私たちが接している精神障がい者は、突然に発病するのではないですし、人とのかかわりのなかで回復をめざします。そのプロセスでは身近で頼りにしたい家族との間の葛藤に悩み、相互に傷ついていることも少なくなく、頼るべき人と場所を失って苦しむこともあります。看護者が日々、出会っているのは、こうした「生きにくさ」をかかえている人たちです。そのため看護者の役割は、1 対 1の関係にとどまらない患者とつながる関係性のすべてにおいて、信頼関係を 1つ 1つつくり直していくプロセスの共有だともいえるのです。その人にかかわるすべての人との関係性や、人と集団へのかかわりに関心を向け、幾層もの社会的な関係を読み解き、身体的・精神的健康問題から回復と予防に向けた取り組みを行います。それは「人と社会との関係のありようを問う」ことでもあるのです。

 したがって、患者を一方的にアセスメントするのではなく、 「関係性のアセスメント」を行うことによって患者の回復を妨げていることのすべてに目を向けることが必要です。日精看の吉浜文洋業務執行理事(佛教大学)は「『硬い高地』としての大学、 『ぬかるんだ低地』で悪戦苦闘を強いられている実践の場というヒエラルキーを超えて『思考と行為の連続性』が重要」 (『看護的思考の探求 ― 「医療の不確実性」とプラグマティズム』ゆみる出版、2018)だと述べています。精神科看護は一方的な患者理解ではなく、さまざまな関係性のなかにある患者と看護者との関係をふまえて回復の手立てを探っていくことなのです。

 

◎ 講師

吉川隆博

日本精神科看護協会 副会長

東海大学医学部看護学科 准教授

 

 地域包括ケアシステムの構築は、看護者にとって大きな目標になります。精神科医療における入院看護、外来看護、在宅看護のさらなる機能強化をめざすチャンスだと受け止め、入退院支援および地域生活支援を担う人材の育成を含め、精神科看護の専門性のさらなる向上をめざす必要があると思います。
 そのためには、先輩らが看護実践で培ってきた「その人らしい生活」を支えるという個別性を尊重した実践知を踏襲し、さらに全国の精神科看護の質の向上につなげることができるように、普遍化できるものを引き出していきたいと思います。また、先輩らの看護実践から学んだ「あきらめない看護」を私たちの誇りとして継承し、看護者自らが援助の限界をつくらず、新たな援助法の創設や援助に必要な体制の開拓・確保に挑戦していきたいと思います。そして地域住民の、こころの健康維持・増進・回復をめざす「地域づくり」に、精神科看護者が貢献できる方策を生み出していきたいと思います。

シンポジウム

シンポジウム「精神科看護の継承と発展」
6月23日(日)10:10~12:20

●シンポジスト

大塚恒子 (おおつか つねこ)

一般財団法人仁明会精神衛生研究所 副所長

一般社団法人日本精神科看護協会 副会長

 

【略歴】

財団法人天理よろづ相談所病院と兵庫医科大学病院を経て、 1996 年に一般財団法人仁明会病院の看護部長に就任。 2010 年 11 月より同法人の精神衛生研究所の副所長、訪問看護ステーション所長に就き、現在に至る。 2005 年に日本精神科看護協会理事、2009 年より副会長に就任。 2006 年に日本看護協会の認定看護管理者の認定を取得。

 

【発言要旨】

 脳の構造・機能をふまえたケアの標準化と、脳機能低下や神経伝達物質の不均衡に伴う「生活のしづらさ」を患者とともに確認することは、「その人らしい生活」を実現する個別的なケアにつながります。これらが精神科医療や看護の可視化となるため、先輩からのケアの継承を整理・統合し、科学的な看護を明確にしなければなりません。さらに、どのような状況下でも時代が求める精神科看護を提供するには、変革を恐れず新たな看護の場を創造するマネジメントを発展させる覚悟が求められます。

 

●シンポジスト

山本哲生 (やまもと てつお)

 社会福祉法人玉医会障害者支援施設たまきな荘 看護部長

一般社団法人日本精神科看護協会 副会長

 

【略歴】

1980 年、医療法人信和会蓮澤病院(現:城ヶ崎病院)入職。 1983 年、大牟田医師会看護専門学校看護婦科卒業。 2002 年、城ヶ崎病院看護部長就任。 2018年 3 月、城ヶ崎病院退職。同年 4 月より現職。 2007 年、日本精神科看護協会理事となり、 2013 年より副会長に就任。

 

【発言要旨】

  1980 年から精神科看護者として勤務してきました。法律は、精神衛生法から精神保健法、精神保健福祉法と移り変わり、地域精神医療へと移行してきました。いまでは地域包括ケアシステムの構築へと変化しています。そのようななかで、患者さんやその家族、職場のスタッフと出会い、さらに日精看の会員となり、多くの出会いと学びの場を広げることができました。精神科看護者として、看護の実践と医療チームとの連携のなかで学んだことや気づきを、その人らしい生活をめざした自立支援に活かせるように話題提供し、みなさんと精神科看護をより深く探求していきたいと思います。

 

●シンポジスト

西岡由江 (にしおか よしえ)

社会福祉法人ファミーユ高知 高知ハビリテーリングセンター センター長

一般社団法人日本精神科看護協会 理事

 

【略歴】

1986 年、関西医科大学附属看護専門学校卒業、関西医科大学附属病院(小児科)勤務。 1994 年、医療法人三家クリニック勤務から精神科看護に携わる。 1998 年、医療法人近森会に入職。近森第二分院に配属。 1999 年、メンタルクリニックちかもり配属。 2014 年、社会福祉法人ファミーユ高知へ異動。障害者福祉サービスセンター ウェーブ配属。 2018 年 9 月より現在の高知ハビリテーリングセンター配属。 2017 年より日本精神科看護協会理事。

 

【発言要旨】

 自分が精神科看護の経験のなかで継承してきたものとは、なかなか形に表せない「精神科看護の魅力」ではないかと思います。魅力とは、看護を通じて自分を知り、自分らしさを受け入れてもらう体験、互いの強みを発揮し創造しあう個別の看護、ともに取り組むことから生まれる絆、そしてなにより、利用者さんの回復にかかわらせていただける喜びを体験することです。しかし、これは抽象的で主観的なものゆえに、継承が難しい。この見えにくい精神科看護をこれからどう発展させていくのか、ハンディキャップを抱えた人たちとともに働く立場から、「つながる、つなげる看護」の視点で話題提供したいと思っています。

 

●座長

内野隆幸(うちの たかゆき)

 医療法人緑心会福岡保養院副看護部長/一般社団法人日本精神科看護協会理事、教育認定委員

 

【略歴】

1986 年、医療法人緑心会福岡保養院入職。 1994 年、看護専門学校緑生館卒業。 2013 年より現職。

 

●座長

松永智香(まつなが ともか)

高知県厚生農業協同組合連合会 JA 高知病院 副院長兼看護部長/一般社団法人日本精神科看護協会 教育認定委員

 

【略歴】

1982 年、高知大学医学部附属病院、 1987 年、医療法人近森会近森病院に入職し、 2007 年、近森病院第二分院看護部長となる。 2015 年、 JA 高知病院看護部長。 2018 年 3 月より現職。

 

特別講演

特別講演「夢持ち続け日々精進」
髙田 明(株)A and Live (エーアンドライブ)代表取締役/(株)ジャパネットたかた 創業者
6月21日(金)13:10~14:10

常に「今を生きて」きた髙田自身の歴史を振り返りながら、長年にわたりラジオやテレビ通販の MCを務めるなかで感じた「伝えることの大切さ」などについてもお話しさせていただきます。

髙田 明

(株)A and Live (エーアンドライブ)代表取締役

(株)ジャパネットたかた 創業者

◆プロフィール

1948 年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造メーカーへ就職し通訳として海外駐在を経験。 1974 年に父親が経営するカメラ店へ入社。 86 年に「(株)たかた」として分離独立。 1999 年に現社名へ変更。 1990 年にラジオでショッピングを行ったのを機に全国へネットワークを広げ、その後テレビ 、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットや携帯サイトなどでの通販事業を展開。 2012 年には、新たな拠点として東京にオフィスとテレビスタジオを開設する。 2015 年 1 月に「(株)ジャパネットたかた」の代表を退任し、同時に「 (株) A and Live 」を設立。2017 年 4 月、プロサッカークラブ「(株) V ・ファーレン長崎」の代表取締役社長に就任。

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